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続・この法が本当に禁じようとしているものは何

  • 2013-05-31 (金) 23:50
  • 時事

各種業界から一斉に反対声明が出るという異常事態を巻き起こした『児童ポルノ禁止法改定案』の衆院提出。あちこちで大騒ぎになってるんだけれども、そもそも何でそんな騒ぎになってるん?というのを、僕が見た範囲でまとめてみた。あくまで僕が見た意見なので、その辺り宜しくお願いします。

まず最初に、被害者が実在しない絵や漫画、アニメなどの表現にまで踏み込んでいるという点。改定案の中に、『6 その他 (2)-1 児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、疑似児童ポルノ等)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究(施行後3年を目途として勘案しつつ検討、その結果に基づく必要な措置)』という項目がある。参議院議員 山田太郎氏のブログ記事に掲載されているのでご覧頂きたい。

実際、こういった疑似的なもので性犯罪を誘発するのかどうか。上記のtweetと記事は、2010年6月にデンマーク国法務省が自国の性科学クリニックに依頼して調査した結果の日本語訳だ。結果は、『マンガ・アニメは性犯罪と因果関係が無い』というものだった。では何故、今回新たに調査研究がが行われるのだろうか?東京都の青少年育成条例改正案の時にも調査が行われ、因果関係が無いという結果が出たという話も聞いているのだが。

といった懸念を抱いている人も居るようだ。

次に、『児童ポルノ』の定義が極めて曖昧な点。あやふやな定義を恣意的に解釈する事で、幾らでもアウトのゾーンを増やせるよ、と。下の二つは極端な例のようだが、実際に海外であったお話だそうだ。また、先日ご紹介した『「嫌だから規制する」なのか──児童ポルノ禁止法改定案、その背後にあるもの(ITmedia News)』という記事にも書かれているけども、これは芸術でこれは児童ポルノ、ってどうやって線引きするのだろうか?研究目的の資料所持(医療や絵画など)と性的好奇心による所持を、どうやって見分けるのだろうか?

加えて、漫画やアニメなどでは年齢があってないものも多く、上記tweetのような話も出てきてしまう。こういったややこしい事案を、誰がどうやって公正にジャッジするのだろうか?それとも、『疑わしきは罰せよ』で業界に表現自粛を促そうとでも言うのだろうか?

更なる問題点として、『単純所持禁止』という点がある。これに関しては過去未来全てにおいて効力を発揮する訳で、例えば懐かしの『ハレンチ学園』や篠山紀信氏が撮影した宮沢りえ『Santa Fe』を所持していた場合はアウトの可能性が高い。何もこれだけではなく、こういった表現は古今東西様々なシーンで見受けられた訳で(『らんま1/2』や初期の『ドラゴンボール』なんかも危ない)、自分の記憶の中に無いものに関しても所持していれば当然アウトになる訳だ。

この法には『自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則は、本法施行日から1年間は適用しない』とも明記されていて、要は施行されたら1年以内に処分しろ、と。それも、誰かの手に渡る可能性がある処分法では違法なので、燃やしたりシュレッドしたりしろと言う事だそうだ。この行為を焚書(ふんしょ)と呼ぶ。歴史の教科書なんかで見かけた言葉だと思うが、まさか現代の日本で見る事になろうとは。

さて、これらの問題点がごちゃまぜになった時に、どういった事態が発生するか一度考えて頂きたい。冒頭で紹介した様々な業界からの反対声明には、この法がもたらさんとする何かに対する、強烈な懸念が込められているのだ。

こういう部分に関する懸念もある。勿論、筋の通った話であれば警察が動く事は当たり前だと思うんだけれども、今回のようなあやふやな法案の場合は、一歩間違えればとんでもない事がまかり通ってしまう可能性がある。また、遠隔操作ウィルス事件の冤罪のような事が起こる可能性は十二分にあるだろう。

今回の法を提出した議員に対する意見。今回の法案が、『児童ポルノ』という強烈なフレーズの力だけで、強引に押し通されているように見えるのは僕だけだろうか。今までに挙げてきたtweetと合わせて読めば、これが一体誰のための何の法案なのか疑問を持たざるを得なくなる。

こちらは今回の法案に関する様々な意見だ。また、以下の様に今回の件を『今まで好き勝手やって来たことに対する警鐘』として受け取っている人も居る。これはこれで正しい意見だと思う。何でもかんでもオッケー、というのはおかしな話なのだ。

僕自身としては、やはりこの法案には反対だ。あまりにもあやふやな点が多く、『児童ポルノ』という言葉が本来の枠を超えて首を締めに来る、というイメージしか持てない。正直、これはマズいやろという表現も幾つか見た事があるけれども、そう言った事を含めて上記の死に舞さんと同じくレーティングやゾーニング策定を先にすべきだと思っている。今のままでは誰も救われず、苦しむ人が無暗に増えるだけだろう。

締めくくりとして、この法案に対して反対活動をすべく赤松先生と共に奔走されている、ちばてつや先生(『あしたのジョー』作者)が描かれた『―と、ぼくは思います!!』をご紹介したい。

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