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『秘密』を読みました

  • 2010-07-30 (金) 0:45
  • 読書

帯を取って驚いた。

大阪帰りの電車の中で、ラストの数十ページを読み終えた。うずくまりたくなった。

実は昔、テレビの再放送か何かで映画版『秘密』を中途半端に見た事がある。序盤30分ほどが見られなかったのだが、その後は何となく、あーこれ『秘密』とか言うやつよなあとボーッと見ていたのだ。ラストの辺りでは図らずも涙ぐんだりしたものだが、オチに関しては悲しみより衝撃が勝り、えっ、と絶句して動けなくなった。そんな、まさか、と。

今回、数年振りにその衝撃を噛み締めようと、この本に手を出した。実際読み始めてみると、映画より小説のほうがよりリアルに感じてしまう。本の中で繰り広げられる夫婦のやり取りは、とても可笑しく、悲しく、何より異様に生々しい。サブキャラクターの生々しさにも驚かされた。様々な場面で描かれる『家族愛』。ああ、そうよなあと納得させられるものばかりだ。

映画版と小説版ではオチが少しだけ違う、という話は耳にしていた。実際ラストまで読んでみたら、驚いた事に今度は衝撃より悲しみが勝った。映画でオチを知っていたというのもあるが、こっちのほうが酷く心に来る。どうしようもないやるせなさが、ずっと残る。少し読み返して、またラストを読み、また少し読み返してラストを読んだ。夫、妻の心情を察すれば察するほど、より一層理解と悲しみが深まる。こんな『秘密』、一生背負えるものなのだろうか。

ただ、不思議な事に、読むのが辛いといった感覚になる事は無かった。また読んでみたいと思うし、素直に人に勧めたいとも思える、本当に良い小説だ。恐らく、読む人の立場によって感想は大きく分れるとは思うが、それでも出来るだけ沢山の人に読んで貰いたいと思える、傑作だと思う。これは、本当にとんでもない小説だ。

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