- 2012-06-16 (土) 0:30
- 日常
仕事明けの喫茶店。カウンターから一番近い席に、悪い大人たちが鎮座している。名を、神奈川の技術屋Tさん、NIGOROのサミエルさんという。
そもそもの始まりは、先日のtwitter。おもむろにTさんとサミエルさんが密談(という名の公開トーク)を始めた。「そういやまだ、しゅうさんとこの喫茶店行ってないんですよね」「じゃあもうすぐ出張あるから一緒に行きましょうか」「どうせならMSX的なもので武装して喫茶店を襲撃しましょう」と。ちょっと待って。本人を目の前にして、一体何を。
MSX。1980年台に国内外で活躍した、ホームコンピュータの統一規格だ。テレビに繋いで使える事と、当時としては非常にリーズナブルな価格帯で人気を博しており、僕ら3人もそれぞれMSXを所持していた。自分でプログラムを書いてゲームが作れる、という喜びに満ち溢れていたあの頃。ファミコンフィーバーを尻目に、日々プログラムを書いては遊んでいたものだ。ファミコンユーザーには(特に描画能力面で)散々バカにされたけども。そんなMSXを未だに愛してやまない大人達が、本気でMSXネタを持ちこんでくるという。怖い。一体何を持ちこんでくるんだろうか。一般のお客さんが引かない程度にお願い致します。
かくして夕方にやって来た2人。「MSX本体をショルダーバッグにして持ってくるのではないか」と噂されていたが、実に普通に来店され、店内では非常に大人しかった。それはそれで逆に怖い。お店が忙しかったこともあり、この時はあまり話が出来なかったのだが、どうやらお楽しみはこの後だそうだ。そうそう、先日のお礼に、とTさんからお酒を頂いてしまった。地元の水で作られた日本酒で、『はやぶさの故郷』というグッと来るサブタイトルまでついている。それを見たサミエルさんが、「しまった、ウチの地元で販売されてる水道水持って来れば受けたのに!」と悔しがっていた。ハイレベル。
閉店後、3人で河原町方面へ向かう。道中ずっとオリジナル版La-Mulanaの話で盛り上がり、原チャとベンツの接触事故を見た後に三条河原町に到着。適当に歩いて、適当なお店に入り、お好み焼きを食べながら、いよいよ悪い大人たちが全力全開に。
最初に飛び出したのは、サミエルさん所蔵のMSXPLAYer(1chip MSXの前に出た公式エミュレータ)に、何とMIDIサウルス。「しかもMIDIサウルスはVer1.0です」という、解る人にしか解らない激レア具合。僕とTさん悶絶。更に飛び出したのがソフトコレクション。「MSXユーザーなら是非遊んでおきたいラインナップです」との事だが、何故テープ版レリクスが。しかもMSX2用レリクス(ROM)もある。「レリクスに関してはX1やX68kのも持ってます」と。おかしい。やっぱりサミエルさんおかしい。しかもソフトケース、良く見たらポニーキャニオン純正のMSX用ソフトケースですよ。こんなん一体何処で。ソフトの状態も恐ろしく良くて、テープなんか新品に見える。「ホンマはね、最初MSX用テープレコーダー持ってこようと思ったんですけど、何処に仕舞ったのか見当たらなくて…」、恐るべし、サミエルさん。
折角なので、サミエルさんイチオシの隠れた名作『アラモ』の動画を。MSX1でクォータービューのスクロール有とは無茶な事を…
続いてTさん、懐からとあるROMを取り出した。これは…先日コッソリ見せて貰ったアレじゃないですか。ダメっすよ、これヤバ過ぎて載せられないっすよ。「これは…」とサミエルさんも驚愕。機会があれば是非ご紹介したいけども、出来る日は来るんだろうか。取り敢えずモザイクかけておこう。
適当に酒と焼き物を頼みつつ、悪い大人達のトークが加速する。恐らく周りのお客さんは誰一人として解らないであろう、レトロハードの話やゲームの話が中心。まずはTさん、自身が所持されていたPC-8001の仕様を挙げて、「解像度たったの160×100で、メモリ16k、画面内で使える色に変更回数制限がある(Enri’s Home PAGE参照)んですよ!音もBeep音だけなんですよ!それに比べたらMSXって、凄い高性能やったんですって!」と力説。激しく噴き出すサミエルさんと僕。先日伺った工業高校時代のエピソードもバンバン出てくる。「BASIC触るくらいならアセンブラのほうが解りやすいす」とサミエルさん、「工業高校時代はハンドアセンブルが常識でした」とTさん。ダメだ僕では太刀打ち出来ない。
続いてサミエルさんの当たり判定話。「昔のアクションゲームのキャラ、ニュートラルポーズって足を開いてるでしょ?あれ、プレーヤーに地面との当たり判定を認識させやすくしてるんですよ。ガケとか階段の前に立った時に解りやすくする為です」と。おお、この話、A君もしていた。「最近のゲームで、それが直立になってるのがあるんですよ…当たり判定が解りづらくて、許せなくて」、なるほど解ります。と、ここでTさんから質問が。「La-Mulanaの地形当たり判定って、どうなってるんですか?プレイしてて思ったんですけど、あれ特殊地形だらけじゃないですか?」、あ、ホンマや。
ここから、La-Mulanaの技術的な話がバンバン飛び出してきた。Tさんと僕、のけ反りっぱなし。特にテクスチャの話を聞いて、引いた。狂ってる。良くぞこんな事を、たった3人で。普通の人だったら絶対やらんような事を、NIGOROの3人は血反吐を吐きながら実行してる。ここで書いても良いんだけど、どうせならまた何らかの形で、皆さんに聞いて貰えるような何がしが出来れば良いなあと思う。La-Mulanaのウラガワ、恐ろしい深さだ。
話はこれだけで収まらず、実は半分くらいは真面目な話をしていた。悪い大人達は、意外に真面目な大人達でもある。で、気が付いたら終電間近。ノンストップで5時間(サミエルさんとTさんはウチの喫茶店と帰りの電車でも喋ってたから7時間)も喋っていた。それでもあっという間と感じたんだからよっぽどだ。近くの駅まで二人を見送り、僕は終バスを逃し、結局地下鉄で帰路についた。お二人とも遠路はるばる、本当に有難うございました。最高の仕事明けになりました。また、近々。
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