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2013-01-04

地獄の鍋

悲劇ってのは、大抵予期せぬ所からやってくるもので。蓋が空いたその瞬間、僕は地獄に叩き落された。

今年もまたオカンの兄弟で新年会をやろうと、呼び出されたのは市内のホテル。さんざ悩んで、今日は中華をみんなで頂く事になった。本格的な中華なんて久々だ。去年はバイキング形式だったが、今年はコース料理という事で気楽だ。冗談を言い合いながら、運ばれてくる料理を頂くだけの簡単なお仕事。幸せなものである。上記の写真は、やたら長い箸にテンションが上がっていた僕だ。

が、コースメニューの中に不穏な文字を発見した。メインの肉料理、僕の天敵であるビネガーを使用しているとの事。まあ、食わなければどうという事は無いかと思っていた。思っていたのだ。蓋が開く、その瞬間までは。密室、温料理、7人分。今考えてみれば、どう考えても地雷としか言い様がない条件が揃っているじゃないか。蓋が空いて5秒と経たず、僕は部屋を飛び出した。充満したのだ、あのニオイが。

そんなオーバーなと思う人も居るだろうが、僕にとっては切実な死活問題だ。口に入るどころか、鼻にニオイが入っただけで悶絶する。僕にとっては劇物以外の何物でもない。僕の両親は未だ半信半疑で、いつか僕がこれを克服出来るんじゃないかなんて大きな勘違いをしているけれども、無理。どう頑張っても、無理。オトンなどは未だ僕を騙して食べさせようとするが、僕の絶対的な検知精度と拒否反応を見ていい加減学習をして欲しい。

ここがホテルで良かった。店を出た所にソファがあり、ここで僕は思う存分鼻呼吸をした。残してきた上着や荷物が心配だが、あの部屋には当分入る事は出来ない。10分、20分経過して、ようやく様子を伺おうかという気になった。ゆっくりと部屋に戻ると、そこは次の料理の匂いで充満していた。危機は去った。

しかしここで遅れて来た伯父が登場。何とお店の方、気を利かして1人前分だけ料理を後から用意してくれていたのだ。つまり。見覚えのある蓋の料理が来た時、僕は席を立つ準備をした。1人前なら何とかなるかなと一瞬思ったが、儚い希望は強烈な現実によって打ち砕かれた。地獄再び。店を飛び出す僕。

念の為に書いておくけれども、ニオイが原因で店を飛び出したのは幼少の頃以来だ。そもそも危険度が高い寿司屋や回転寿司などは、ここ30年近く入った事はもとより近づいた事すらない。また、普段の何気ない食事で感じた場合、ちょっとくらいなら我慢はする。だが、今日のこれは僕のキャパシティを大きく超えていた。普段、中華へ行っても単品でしか頼まないから、こういう事態に遭遇する事自体が無かったのだ。打ちひしがれる僕。どうする事も出来ない。再び20分ほど経ち、席の制限時間がわずかになった頃に復帰。それまでに食べた飯の味は、すっかり忘れ去っていた。

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