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庭師と時間軸

  • 2013-11-10 (日) 0:40
  • 日常

喫茶店、今日の最後のお客さんは庭師のMさんだった。僕と歳の近い職人さんで仲も良く、ウチの店でも随分お世話になっている。僕が言うのも変だけれど、今時珍しいくらいに真面目で好青年だ。今日はお茶の稽古の帰りに寄ってくれたそうだ。

Mさんは随分前からウチの店に通ってくれているんだけれども、僕と喋り出したのは割と最近だったりする。店では割と静かなキャラをしている僕(その分オカンが喋りキャラ)、その姿を見てずっと遠慮していたんだそうだ。しかしそこはオカンの息子、喋れと言われれば際限なく喋らせて貰う訳で。「喋る人やったんですね!」と驚かれてオカンも笑っていた。

職人さんの話を聞くのは面白い。僕の全く知らない世界をどんどん見せてくれる。名刺の肩書きにもある『空師』というのは高い木に登って枝を打つ(伐採)職人さんを指すんだけども、その為の専門学校もあるそうだ。材料の仕入れや技術的な話を沢山してくれるMさん。庭師と言っても大工に近い仕事をこなす事も多く、「なんでも屋さんに近いですね」と笑う。どうしても剪定のイメージが強いので、聞けば聞くほど意外な姿が明らかになっていく。ちなみに、庭師にとって京都で仕事をするという事は、一番大きなブランドになるそうだ。「日本で一番レベルが高いのは、やっぱり京都ですよ」とSさん。京都で仕事が出来れば、全国どこへ行っても通用するらしい。

Sさんは煎茶も習っているんだけれども、このお茶席がちょっと変わっているそうだ。お茶を飲むことだけではなく、庭を楽しみ、会話を楽しみ、そして時の移ろいを楽しむ。「お茶会をする前とした後では、陽の指す方向が変わるじゃないですか?それによって、景色の見え方も変わるんですよね」、なるほど普段の生活では気づきにくい、ミニマムな変化を楽しむという事か。と、この会話を通じてひとつ大きなことに気が付いた。庭師の仕事には、大きな時間軸が存在する。一日の、一年の移ろいを考えて庭を設計しなければいけない訳だ。単にその時だけ綺麗に見えておしまい、である筈が無い。想像以上に奥深い文化だと再認識させられた。

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