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2012-08-19
僕のアイデンティティが吹き飛んだ
- 2012-08-19 (日)
- 日常
喫茶店の準備をし出した頃から歯が痛みが出始め、オープンと共にのたうち回った。昨日を上回る痛み。ツボを押しても一時的にしか効かず、氷を口に含んでいないとマトモに動けない。原因は目か、肩か、歯か。そんな事を考える余裕すら無かった。無理。もう我慢出来ない。按摩師のNとも相談し、ネットで日曜でもやっている歯医者さんを探して、店を飛び出した。
原チャで15分ほど走った所に、日曜診療をやっている小さな歯医者さんがあった。歯医者に入るのは、高1の頃に歯石を取った以来だ。生まれてこの方、虫歯が一本も無い僕にとって、かなり縁の無い科目だ。とにかく痛み止めでも何でもいいので助けて下さい。ホント、発狂する。
幸い僕の前には1人しか患者さんが居らず、これならすぐに診て貰える…と思ったら、先の治療をしている人が長かった。口に放り込んで来た氷は、とっくの昔に溶け切っている。必死にツボを押し、自閉モードに突入。30分ほどして、ようやく僕の番がやってきた。
「ここ、右上の親不知の側面、虫歯ですね、黒いのが少し見えてます」
口内をチェックし、レントゲンを見ながら先生が放った言葉は、僕の思考を別の形で停止させた。虫歯。僕が、虫歯。数少ないアイデンティティが崩壊する音が聞こえた。34年生きて来て、初めて体感したこの痛み、虫歯だったのか。えーと、じゃあ、どうすりゃ良いんですか。僕こういうの初めてで。
「じゃあ、抜きますか」
え、そんな事も無げに。どれくらいで出来るんですかと聞くと「5分くらいですね」と笑顔。えええ、じゃあお願いしますと言うと、即麻酔。塗る麻酔、注射麻酔、注射麻酔の三段構成。で、細いペンチみたいな器具でスポンと抜いた。終了。ついでにレントゲンを見せて貰ったら、下の歯は両側とも真横に親不知が生えてきてるじゃないすか。「今の所は放置でも良いかもしれませんが…」って、これいつか砕くの。ちょっと待って心の準備が。
「うわ…これちょっとエラい事になってましたね…」
と先生が見せてくれた歯、側面にとんでもない穴が空いていた。ちょうど隣の歯に隠れて見えていなかったのだが、どうやってこんな側面にこんなデカい穴が。下まで貫通してるし、向こう側も透けて見える。「歯ブラシの届きにくい場所やったんですね」と言われるけど、にしたってこれは。記念に歯を貰い、動揺し過ぎて保険証を受け取り忘れかけ、帰路に着いた。その後、痛みは完全に消し飛んだのだが、色んなものを一気に失ったような気分で立ち直れない。さようなら、僕のアイデンティティ。
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